「痴漢」に関するお役立ち情報
痴漢の刑罰・逮捕された後の流れ
「満員電車内で女性に痴漢をした男性が逮捕された」「痴漢行為をした犯人が、ホームから飛び降りて逃走した」などという報道が流れることがあります。
このように痴漢事件を犯した場合、迷惑防止条例違反、もしくは不同意わいせつ罪に問われます。
起訴をされれば罰金刑でも前科となり、その後の生活に何らかの影響が生じてしまう可能性があります。
この記事では、痴漢の罰則、逮捕された後はどうなるのか、最終的な刑罰はどう決まるのかなど、痴漢犯罪の基本について説明していきます。
1 痴漢は何罪?
「痴漢罪」という罪名の犯罪は存在しません。
痴漢犯罪は何罪に該当するのかというと、以下の2つが考えられます。
⑴ 迷惑防止条例違反
いわゆる迷惑防止条例は、各都道府県が独自に制定しており、条例の名称、痴漢に該当する行為内容やその罰則にも、都道府県によって違いがあります。
⑵ 不同意わいせつ罪
電車内で痴漢が行われた事案では、刑罰の軽い迷惑防止条例違反に問われるにとどまることが多いのですが、下着の中に手を入れる行為等、犯行態様が悪質な場合には、より刑罰の重い不同意わいせつ罪に問われることになります。
なお、条例違反行為の罪も、不同意わいせつ行為の罪も、被害者の告訴がなくても起訴される可能性があります(これを非親告罪と呼びます)。
2 痴漢で逮捕された場合の流れ
⑴ 逮捕・勾留
痴漢で逮捕された場合、警察官から取り調べを受け、48時間以内に身柄を検察官のもとに送られます。
検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕から72時間以内に裁判官に勾留請求するか、それとも釈放するかを判断します。
検察官から勾留の請求を受けた裁判官は、被疑者に勾留質問を行ってその当否を審査します。
罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれまたは逃亡のおそれのいずれかにあたり、捜査を進めるうえで身柄の拘束が必要なときに、被疑者の勾留を認めます。
痴漢犯罪の場合、被疑者と被害者・目撃者の面識がなく(事件後の接触の危険がなく)、家庭や職場がはっきりしており、素直に犯行を認めている場合には、罪証隠滅や逃亡のおそれはないとされ、そもそも検察官が勾留請求をしない場合や裁判官が勾留請求を却下する場合もあります。
(ただし、不同意わいせつ罪の痴漢は極めて悪質であるため、勾留決定をされるケースも多いです。)
勾留期間は原則10日間ですが、捜査の必要上やむを得ない場合には、さらに10日以内の延長が認められます。
つまり、勾留期限は、勾留請求した日から最大20日間、逮捕からは最大23日間です。
検察官は、勾留期限までに被疑者を起訴するか、それとも釈放するかを決めなくてはなりません。
さらに起訴された場合には、保釈が認められない限り、身体の拘束(起訴後勾留)が続くことになります。
⑵ 最終的な刑罰の決定
痴漢で逮捕された被疑者の処分としては、起訴猶予による不起訴処分、もしくは起訴処分が考えられます。
起訴された場合の刑罰としては、罰金刑(条例違反の場合のみ)、もしくは懲役刑が考えられます。
初犯であれば、起訴されても罰金または執行猶予が付くことが多いと思われますが、性犯罪の前科がある場合や、犯行態様が非常に悪質な場合には、懲役刑という場合もあるでしょう。
3 罰金等の刑罰を避けるため弁護士に依頼すべき理由
⑴ 被害者との示談交渉を行うことができる
痴漢の処分結果に最も影響を与えるのが、被害者との示談です。
示談は、示談金を支払うことを条件に被害者から許しを得るものです。
示談の合意が成立した証拠として作成される示談書には、被害者が「処罰を望まない」「寛大な処分を望む」「宥恕する(ゆうじょ=寛大な気持ちで許す)」などの文言が記載されます。
示談金の支払いによって、①被疑者側が反省し、被害の回復に努力したこと、②被害が金銭的に補償されたことが明らかになり、上述の宥恕文言の記載によって、③被害者の処罰感情、被害感情が無くなったことが明らかとなるため、被疑者に有利な事情として考慮され、検察官の判断を不起訴に傾けることになるのです。
痴漢で逮捕された人に有利となる結果を導くには、いかに早期に事件に対応し、示談を成立させることができるかにかかっているのです。
なお、示談のための交渉を開始したくとも、捜査機関が、加害者やその家族などに被害者の連絡先を教えることはありません。
弁護士が「加害者に教えないこと」を条件に、捜査機関を通じて被害者からその連絡先を教えてもらいます。
こうして初めて示談交渉が可能になります。
したがって、弁護士を依頼しない限り、示談交渉を開始することはできないといえます。
加えて、示談交渉を弁護士に任せるべき理由は他にもあります。
⑵ 被害者から拒絶されにくい
性犯罪の被害者は、加害者に対する恐怖心、嫌悪感、処罰感情が強く、加害者側の人間が接触しようとしてもまず拒絶されてしまいます。
しかし、法律の専門家として公的な資格を持つ弁護士が間に入ることで、交渉のトビラを開いてくれる場合が多いです。
⑶ 被害者の感情を害さずに交渉できる
性犯罪は被害者の精神に大きな衝撃を与えています。
残された心の傷に十分に配慮して交渉を進めない限り、被害者の感情をより害してしまい、許しを得て合意を形成することは困難です。
これは刑事事件に強い弁護士であればこそ、はじめてなし得る繊細な作業です。
⑷ 過大な示談金要求を阻止できる
被害者といえども、時には、示談を望む被疑者の弱みにつけ込んで、著しく過大な示談金を請求してくるケースもあります。
痴漢事件の経験と知識を備えた弁護士であれば、類似の事案における示談金の相場を把握していますから、不当な要求に対し毅然と対処すると同時に、被疑者の提示額が適正な金額であることを説明し、これを受け入れてくれるよう説得することが期待できます。
それでも被害者が過大な要求を続ける場合には、その交渉過程を検察官・裁判官に報告し、示談成立に至らないのは被害者側に非があることを明らかにして、被疑者が不利とならないよう対処します。
⑸ 不備のない示談をまとめ、不起訴の可能性が上がる
示談は、加害者と被害者の一種の契約であり、示談が成立したことを示す示談書は契約の証拠ですから、法的に不備のない、問題を残さない示談をまとめることが重要です。
例えば、上述の宥恕文言が欠落していれば、被害者の処罰感情が沈静化されたことの証拠とはならず、示談の効果は限定的となってしまいます。
また、示談金の支払義務以外には何らの債権債務関係もないことを明示する清算条項が欠落していれば、示談成立後に重ねて金銭を請求されても、これを防ぐことができません。
このような失敗を防ぐには、弁護士に示談交渉を委ねることがベストだといえます。
4 痴漢犯罪に関するよくある質問
⑴ 痴漢をすると何罪になる?
痴漢犯罪は何罪に該当するのかというと、以下の2つが考えられます。
・迷惑防止条例
・不同意わいせつ罪(刑法違反)
電車内で痴漢が行われた事案では、刑罰の軽い迷惑防止条例違反に問われるにとどまることが多いのですが、下着の中に手を入れる行為等、犯行態様が悪質な場合には、より刑罰の重い不同意わいせつ罪に問われることになります。
⑵ 痴漢の罰則は?罰金刑になる?
痴漢で起訴された場合の刑罰としては、罰金刑(条例違反の場合のみ)、もしくは懲役刑が考えられます。
初犯であれば、起訴されても罰金または執行猶予が付くことが多いと思われますが、性犯罪の前科がある場合や、犯行態様が非常に悪質な場合には、懲役刑という場合もあるでしょう。
⑶ 痴漢で逮捕されたらどうなる?
痴漢で逮捕された場合、その後48時間以内に検察庁に身柄を送致(送検)され、検察官の取り調べを受けます。
それから24時間以内(逮捕から72時間以内)には、検察官が裁判官に10日間の勾留請求をするかどうかを判断します。
罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれまたは逃亡のおそれのいずれかにあたり、捜査を進めるうえで身柄の拘束が必要なときには、多くのケースで勾留決定をされるでしょう。
その結果、逮捕に続いて原則10日間勾留されます。
その後、さらに勾留延長されると、合計で最大20日もの期間勾留されることになります。
このような長期の勾留となれば、会社や学校に痴漢の件が発覚してしまいます。
仮に事件の概要を知られなくとも、会社が納得できる欠勤理由を家族が説明することは難しいでしょうから、無断欠勤として会社を解雇される可能性があります。
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